2015/12/03 東保証/中小建設会社の14年度決算分析/利益率の改善進む、自己資本比率平均も上昇

【建設工業新聞 12月 02日 1面記事掲載】

東日本建設業保証(東保証)は、中小建設会社を主体にした14年度の決算分析をまとめた。対象は2万5171社(前回調査2万5683社)。投下資本に対する経常的な利益の割合を示す総資本経常利益率の全体平均は4・66%(2・67%)、本業の収益性を示す売上高営業利益率の全体平均は2・04%(0・82%)にそれぞれ上昇し、改善傾向にあることが分かった。ただ、15年度は請負金額ベースの工事量が減少している地域が多く、同社は動向を注視する方針だ。

調査は、14年4月期から15年3月期までの決算書を同社に提出した企業のうち、東日本に本店がある総合工事業(土木・建築、土木、建築)、電気工事業、管工事業を専業とする法人が対象。売上高1兆円を超す大手ゼネコンは除外。最大・最小1%の範囲にある社を除く平均値を算出した。

総資本経常利益率は、売上高1億円未満の企業は3・18%と全体平均を下回った。地区別では最大が東北の6・05%、最低が東海の4・09%。都県別では福島(7・90%)、岩手(7・64%)、宮城(6・61%)の順に高く、最も低いのは青森(3・38%)だった。

総資本経常利益率は単純労務主体の工事が多いほど上昇する傾向にあるが、福島の高さが放射能除染工事の影響かどうかは不明という。上位3県は、復興工事の多い東日本大震災の被災地となっており、旺盛な工事需要に支えられ、収益力が増している社が多いという見方がある。

売上高営業利益率は、全体平均は10年度がマイナスで、11年度にプラスに転じて以降、回復基調にある。ただ財務省が9月に発表した法人企業統計調査によると、建設業の14年度売上高営業利益率は3・2%で、全産業平均(3・7%)に届いておらず、東保証は「低い水準」と見ている。東保証が4~9月に保証を取り扱った工事などの請負金額は、大型補正予算の執行があった反動で前年同期の水準を下回っており、次回調査の結果が注目される。

自己資本比率の全体平均は25・45%(22・85%)に上昇した。売上高が1億円未満の企業の平均はマイナスで、利益を源泉とする資本の蓄積が進まず、金融機関からの資金調達が難航する企業も少なくないとみられる。

資材費や外注費など工事原価を売上高から差し引き、従業員数で割った「1人当たり付加価値」は958万円(884万円)に上昇した。労働生産性の評価にも用いられる数値で、11年度(790万円)から約160万円増えた。地区別では東北だけが1000万円超。工事価格の補正措置が要因とされる。関東は976万円(902万円)、北陸は934万円(860万円)で、上昇額はともに全地区で最大だった。

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