2015/12/09 経理機構/法定福利費の業界標準構築へ/研究会で法的位置付け整理、16年3月に提言

【建設工業新聞 12月 09日 1面記事掲載】

建設産業経理研究機構(代表理事・東海幹夫青山学院大名誉教授)は、国土交通省の委託を受け、下請企業が法定福利費を確保し、社会保険加入率を向上させるための提言を来年3月にまとめる。学識経験者や業界団体関係者などで構成する「法定福利費に関する調査研究会」(座長・蟹澤宏剛芝浦工業大教授)をこのほど立ち上げ、法定福利費の法的位置付けなどの検討を始めた。最終的には、法定福利費を含めた適切な見積もり、契約、支払いを行うための業界標準の構築を目指す。

研究会は3~4回の会合を開き、▽法定福利費に関する法的課題▽見積もり・積算における法定福利費の位置付け▽法定福利費の会計処理方法▽支払い実務▽社会保険加入率を上げる方策-の5項目について整理・検討を行う。

法的課題の整理では、法定福利費を見積書にだけ明示した場合と、契約書に明示した場合の法的性格などを検討する。積算で法定福利費をどう位置付けるかも整理する。

さらに、会計処理では工事原価の意義を踏まえ、法定福利費に関する日常の会計処理や決算書での表示について整理する。

支払い実務では、法定福利費の事後精算などについて議論。見積もり金額と実際の支払い金額が乖離(かいり)している場合の取り扱いも検討する。法定福利費の別枠支給についても併せて検討する見通しだ。

法的位置付けなどを整理した上で、社会保険加入率を向上させるための具体策を練る。標準見積書の活用など下請企業の見積もり能力の向上策や、建設業の電子商取引ツール「CI-NET」と、工事見積もり条件を明確化する「施工条件・範囲リスト」の活用促進策が検討項目になる予定。中小の元請企業が法定福利費を確実に支払うよう、見積もり、契約、支払いの業界標準を打ち出したい考えだ。

さらに、建設業法に基づく見積もり義務に法定福利費の明示を加えたり、標準下請契約約款に法定福利費の取り扱いを明示したりすることが可能かどうかも検討する。建設業許可の許可権者(国交省と都道府県)に建設業者が提出する完成工事原価報告書で、法定福利費の金額を開示することも議論の対象とする。

調査研究会の委員は次の通り。 ▽蟹澤宏剛芝浦工業大教授▽木田修特定社会保険労務士▽椹木茂大成建設建築本部建築部部長(日本建設業連合会)▽管本栄造中央大教授▽長尾正弘全国建設業協会労働部長▽二宮照興弁護士▽丹羽秀夫公認会計士・税理士▽塗木賢治永和産業代表取締役(全国鉄筋工事業協会)▽武藤俊夫丸日産業代表取締役(全国建設室内工事業協会)▽矢崎敏郎矢崎労務安全事務所所長

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