2016/01/04 石井啓一国交相に聞く/建設業の構造改革、「力強い一歩踏み出す」

【建設工業新聞 1月 4日 1面記事掲載】

◇将来像の議論スタート
石井啓一国土交通相は日刊建設工業新聞など建設専門紙の新春共同インタビューに応じ、施工の品質や建築物の安全性確保に向け、元請業者の管理責任や技術者配置、元下請関係といった建設業の構造的な問題に焦点を充て、建設業の将来像に関する議論を今年スタートさせる考えを強調した。基礎杭施工データの流用問題で浮き彫りになった諸問題に正面から向き合い、「建設業にとって力強い一歩を踏み出す年になるよう、行政と建設業界が力を一つにして取り組んでいきたい」と抱負を述べた。

基礎杭問題で設置した有識者会議が昨年末に国交相に提出した再発防止策を踏まえ、石井国交相は「工事全体に関する元請の管理責任のあり方、主任技術者の適正な配置など元請・下請による適正な施工体制の構築を図ることが必要だ」と指摘した。

加えて公共工事だけでなく、民間工事でも「発注者、元請、下請の役割、責任の明確化を図ることが重要」と述べるなど、これまで問題視されながらも対策の実行には至らなかった問題の是正に速やかに乗りだす考えを表明した。

建設業は「『地域の守り手』として重要な役割を持っている」とも述べ、「その役割を担い続けるためには、それぞれの企業が将来の見通しを持てることが非常に重要」と強調。「公共投資の安定的、持続的な確保が何よりも重要だということで、16年度当初予算案の国交省の公共事業関係費については、前年度を上回る予算額を確保した」と昨年末に閣議決定した国の16年度予算案の背景を説明した。

喫緊の課題となっている建設業の担い手確保・育成策については、「若い人が入ってくる魅力ある職場にするためには、適正な賃金水準を確保したり、社会保険への加入を促進したりといった処遇の改善が重要だ」とあらためて強調。その一環として「技能労働者の経験が蓄積されるシステムの構築にも取り組んでいきたい」と官民共同で検討が進む技能労働者経験蓄積システムの実現に意欲を示した。

加えて、「『担い手3法』の趣旨の徹底を図り、歩切りの根絶やダンピング対策の強化にも取り組んでいく」と抱負を述べた。

□生産性向上も協力推進□
今後の社会資本整備については、人口減少や財政面の制約を踏まえ、「賢く投資し、賢く使うインフラマネジメント戦略へと転換していきたい」とし、財政健在化と経済活性化を両立させるインフラ整備を追求する方針を示した。

さらに「人口減少社会においても生産性を向上させることで、経済成長を実現させていくことは可能だ」とも指摘し、「わずかな投資で過去の投資効果を開花させる『ストック効果開花プロジェクト』に重点投資していく」と述べた。

工事の生産性向上では「社会資本整備の測量、設計、施工、検査のあらゆるプロセスにICT(情報通信技術)を導入して生産性を高める『i-Construction』を進めていきたい」と昨年発表した構想の積極推進を強調した。

15年度補正予算案と16年度当初予算案の執行にも言及。「予算成立後は最新の資材価格を反映した予定価格の適切な設定を行い、複数年契約など発注の平準化を行うことで、効率的で円滑な事業の実施を図っていく」と述べ、業界からの要望も強い発注・施工時期の平準化を一段と進めていく方針を示した。

東日本大震災の被災地復興については、「被災地では今年の3月末には集中復興期間を終え、4月からは復興創生期間という新たなステージになる。復興の一段の加速化を図っていく」と表明。「復興を実感できるよう、各市町村の実情をきめ細かく把握し、対策を打っていく」と述べた。

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