2016/03/03 国交省/建設業許可要件見直し検討/中建審・社整審小委に方向性提示

【建設工業新聞 3月 3日 1面記事掲載】

国土交通省は2日、東京都内で開いた中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)合同の基本問題小委員会(大森文彦委員長)に、建設業の構造的な課題への対応の方向性を示した。「建設生産システムの変革」「建設生産を支える技術者や担い手の確保・育成」「建設企業の持続的な活動が図られる環境整備」の3本柱で検討事項を列挙。1972年の創設から大きくは変わっていない建設業許可要件のあり方の点検を盛り込んだ。

許可要件について国交省は、産業構造や企業経営をめぐる状況を踏まえて点検が必要とした。特に、許可申請時に必要な経営業務管理責任者制度について、大手企業の役員数が減少傾向にあることや、法定の経営経験年数が長く要件に該当する人材確保が困難だとして、許可を取得するメーカーなどから見直しを求める声が出ている。

「地域の守り手」の役割を果たす地域建設企業の後継者問題も挙げ、施工能力のある企業が廃業して災害対応空白地域が発生することへの対応策も提示。地域の中小建設企業の協業化や集約化といった事業連携、合併などの企業再編、事業承継を支援する対策を検討するとした。

元・下請の施工体制上の役割や責任を明確化するため、元請の総括的な管理責任の明確化や一括下請負の判断基準である「実質的関与」の明確化も検討。民間工事の請負契約を適正化する観点から、工事の準備段階で発注者や設計者と情報を共有することで責任・役割分担の明確化や適正化を図ることも検討事項に挙げた。

これらの方向性をめぐる議論で、委員の才賀清二郎建設産業専門団体連合会(建専連)会長は、維持更新やリフォームなどの市場を健全に成長させる観点から「現行では建設業許可が不要な500万円未満の工事を主力とする業者も登録するようになれば、誰が責任を取るかも明確になる」と指摘。それが重層構造の改善や社会保険加入の促進にもつながるとの見方を示した。

基本問題小委は次回から個別テーマの議論に入り、6月をめどに中間取りまとめを行う。

《建設業を取り巻く情勢・変化と課題を踏まえた対応の方向性》
【建設生産システムの変革】
〈元請・下請の施工体制上の役割・責任の明確化〉
▽元請の総括的な責任管理の明確化(複数人体制における監理技術者等の役割の明確化、工場製品に関する品質管理のあり方)▽施工体制における監理技術者・主任技術者の役割の違いの明確化▽実態を踏まえた主任技術者の適正な配置のあり方▽実施工への関与の度合いが小さい企業の関与のあり方(一括下請負の判断基準である「実質的関与」の明確化等)
〈民間工事における発注者・設計者・元請・下請の請負契約等の適正化〉
▽工事開始前の準備段階における発注者や設計者との情報共有等を通じた責任や役割分担の明確化・適正化▽工期変更や追加工事等に関する設計変更等の円滑化
〈施工責任に係る紛争調整等の円滑化〉
▽施工責任を専門的見地から審査等する中立的組織・機能の検討
〈施工に関する情報の積極的な公開〉

【建設生産を支える技術者や担い手の確保・育成】
〈技術と管理能力に優れた技術者の確保・育成と活躍〉
▽現場実態に即した監理技術者等の資格要件等の見直し▽受験機会の拡大に向けた技術検定の運用改善や受験資格要件の見直し
〈大量退職時代に向けた中長期的な担い手の確保・育成〉
▽10年後の技能労働者の人材確保目標の提示と施策ターゲティング▽担い手確保の施策ターゲティングに応じた施策の総合的推進(若手の入職促進・離職防止、高齢層の引き留め、女性活躍、先鋭的プロモーション等)▽施工時期等の平準化や多能工化を通じた人材の効率的活用の推進▽専門工事業の人材に係る経営戦略の高次化に対する支援(給与・雇用形態の工夫、繁閑調整の推進など就労構造の改善)▽優秀な技能者を擁する下請企業の受注機会の拡大、技能者の処遇改善の促進(技能者の技能・経験を蓄積するシステムの構築)▽地域開放型の職人育成塾の設立など、地域における人材確保や地域活性化に資する取り組みを支援

【建設企業の持続的な活動が図られる環境整備】
〈中小建設企業の企業再編や事業承継等の支援等〉
▽地域の中小企業の協業化・集約化等の事業連携、合併等の企業再編や事業承継を支援する対策の検討・実施
〈経営業務管理責任者制度等のあり方の検討〉
▽経営業務管理責任者制度も含めた許可要件について点検。

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