2016/04/28 国交省/担い手確保・育成策素案/「人材投資成長産業」目標に、人・企業で好循環を

【建設工業新聞 4月 28日 1面記事掲載】

国土交通省は26日、東京都内で開かれた中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)合同の基本問題小委員会(大森文彦委員長)に、建設産業の中長期的な担い手の確保・育成施策の素案を示した。人と企業が共に成長する好循環を実現するための重点施策と、新卒や女性、高齢者など担い手のターゲットごとのきめ細かな施策を併せて展開。建設産業を支えるのに必要な技能労働者の確保・育成につなげる。

素案では「人への投資」と「経営のイノベーション(新たな価値を生み出す革新)」を進め、人と企業が成長し、社会から働きやすい職場・成長を追求する産業と認知されることで「選ばれる産業」へと発展する「人材投資成長産業」を、建設産業のこれからの方向性として掲げた。

企業はPR・採用、雇用、育成、評価・処遇と切れ目なく人に投資を行い、担い手は技能やモチベーションなどを高めていく。併せて社会のニーズや技術の変化を捉えたイノベーションによる生産性向上に取り組み、時代に合った経営を追求。人と企業が共に成長する好循環(成長サイクル)を建設産業が目指す理想の形として示した。

好循環を生み出すための重点施策として、▽処遇の改善▽キャリアパスの見える化▽社会保険未加入対策▽教育訓練の充実▽戦略的広報・先鋭的プロモーション▽生産性向上-の六つを設定した。

既に具体策を講じているが、成長の基盤となる新システムの構築とともに中核となる人材の安定的確保(正社員化)を促す施策を強化。「建設キャリアアップシステムの構築」「技能労働者・技術者・経営者間のシームレスなキャリアパスモデルの構築」「地域や業界団体で支える職人育成塾などへの支援強化」「建設業全体のイメージアップにつながる施策展開」「生産性向上のための複合工(多能工)」などの強化策案を挙げた。

施策の効果・実効性を高めるため、ターゲットを▽新卒▽中途採用▽離職防止(現役)▽女性▽高齢者-の五つに分類し、それぞれに対応した施策案を示した。若者や中途採用については、採用ルートの拡充や業界のイメージアップを通じて採用活動の強化につなげる。離職防止では教育訓練体制の整備・充実や、社内・社外・若手のコミュニケーションや交流の活性化を通じて定着を促す。女性活躍では多様な働き方の実現に向けた環境整備、高齢者には指導教員の育成体制の構築などを検討する。

会合で桑野玲子東大教授は「人の成長には時間がかかる。効果の評価には長い目で見る仕組みが必要」と指摘。小澤一雅東大大学院教授は「マーケットが変化する中でどういう人を育てるか。規模だけでなく質の目標設定も必要だ」と述べた。

今後、人材確保の目標設定などを詰め、6月をめどに中間取りまとめを行う。

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