2016/06/10 国交省/中建審・社整審基本問題小委に中間まとめ素案提示/構造的課題の対応策示す

【建設工業新聞 6月 10日 2面記事掲載】

◇さらなる課題も指摘

国土交通省は、中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)合同の基本問題小委員会(大森文彦委員長)が9日開いた会合(第6回)で、これまでの審議の結果を中間取りまとめ(素案)として示した。基礎杭の施工データ流用問題を受けて対策委員会(深尾精一委員長)が提言した建設業の構造的課題に関する対応策を提示。今後の取り組みの実施時期を明示するとともに、さらなる議論が必要な課題も指摘した。22日開催予定の会合で取りまとめを行う。=1面参照

基本問題小委では、「建設生産システムの適正化」「建設生産を支える技術者や担い手の確保・育成」「建設企業の持続的な活動が図られる環境整備」の3本柱で検討事項を整理し、個別課題について審議を重ねた。素案では個別課題に関する対応の方向性を提示した。

元請と下請の責任・役割を明確化するため「監理技術者制度運用マニュアル」を改定。大規模工事で監理技術者を補佐する者の配置推奨や、監理技術者の役割を2種類に大別することを盛り込む。技術者の専任要件の見直しは継続検討事項とした。

一括下請の禁止については法令順守の指導徹底とともに通知を出して判断基準を明確化。実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除する。

建設産業のこれからの方向性として、人と企業が共に成長し選ばれる産業へと発展する「人材投資成長産業」を提案した。処遇改善や教育訓練の充実など六つの重点施策と、新卒や女性など担い手のターゲットごとのきめ細かな施策を併せて展開。建設技能者の資格や就労実績を統一ルールで蓄積する「建設キャリアアップシステム」の構築や社会保険未加入対策の強化など担い手の確保・育成施策を順次実施する。

民間工事の適正な品質確保のための指針を策定。設計変更などの協議ルールを明確化し、発注者と元請などの請負契約を適正化する。マンション管理適正化法に基づく11種類の図書の内容を徹底する通知を出し、施工情報を積極的に提供する。

建設産業を取り巻く情勢を踏まえ、さらなる議論が必要なテーマも指摘。将来の建設市場や産業構造への対応、建設生産システムの複雑化・多様化、海外建設市場や新たな事業領域への進出などを挙げた。

中間取りまとめに盛り込む検討事項と主な方向性は次の通り(◎速やかに実施、◯順次実施、◇導入に向けて具体的内容を検討、▽引き続き検討を継続)。

【建設生産システムの適正化】
■技術者の適正な配置のあり方
▽専任要件に請負金額以外の要素を加味することについて検討
■施工体制における監理技術者等の役割の明確化
◎「監理技術者制度運用マニュアル」を改定し監理技術者等の役割を2種類に大別
■大規模工事における技術者の複数配置の推奨
◎「監理技術者制度運用マニュアル」を改定し大規模工事での監理技術者等を補佐する者の積極的な配置を推奨
■実質的に施工しない企業の施工体制からの排除
◎一括下請の禁止について法令順守の指導を徹底。その上で一括下請の判断基準の明確化に関する通知を発出し元請・下請ごとに基準を整理
■工場製品に関する品質管理のあり方
▽製造会社に対する一定の制度的関与を設けることについて検討
■民間工事における発注者・元請等に請負契約の適正化
◎民間建設工事の適正な品質を確保するための指針(民間工事指針)を策定
■施工に関する情報の積極的な公開
◎マンション管理適正化法に基づき提出される11種類の図書について内容等の周知徹底(通知発出)
▽重要工程で作成された施工に関する情報について建設企業により保存されるよう取り組みを促す方策について検討
■施工責任に係る紛争調整等の円滑化
▽施工品質をめぐるさまざまな紛争の解決を図るため「建設工事の請負契約に関する紛争」以外のものも建設工事紛争審査会の対象とすること等について検討

【建設生産を支える技術者や担い手の確保・育成】
■技術と管理能力に優れた技術者の確保・育成と活躍
◇受験機会の拡大に向けた技術検定の見直し
■大量離職時代に向けた中長期的な技能労働者の確保・育成
◯処遇の改善(月給制の導入や賃金アップ、休日確保など不断の働き掛けの実施)
◯キャリアパスの見える化(建設キャリアアップシステムの構築)
◯社会保険未加入対策(元請の下請に対する指導強化等の対策強化策の検討)

【建設企業の持続的な活動が図られる環境整備】
■地域の中小建設企業の合併や事業譲渡等が円滑になされる環境整備
◇合併時の建設業許可、経営事項審査における一部要件の事前確認手続きの整備
◇既存の財務諸表等の活用による申請に係る事前準備に要する期間短縮に向けた措置
◇廃業せざるを得ない建設企業から技術者等を受け入れた場合の経営事項審査上の特例を措置
■経営業務管理責任者要件のあり方の検討
▽企業全体の経営の安定性に対する建設業経営の影響度等を踏まえ経営業務管理責任者の配置に係る要件について検討
■軽微な工事に関する対応の検討
▽軽微な工事のみを請け負い者に関し、その実態を把握した上で必要に応じ一定の関与を行うことについて検討。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る