2016/10/17 国交省/一括下請負禁止へ「実質的関与」の判断基準策定/元請・下請別に役割明確化

【建設工業新聞 10月 17日 1面記事掲載】

国土交通省は、建設工事で実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除し、下請の不要な重層化を回避するため、一括下請負の判断基準を策定した。元請と下請それぞれが果たすべき役割を具体的に設定し、一括下請負禁止のさらなる徹底を図る。1992年に通知した「一括下請負の禁止」に判断基準を盛り込み、土地・建設産業局長名で建設業105団体や都道府県・政令市、主要発注機関に14日付で通知した。一括下請負に関するQ&Aなども添付している。

一括下請負に該当しない「実質的関与」を判断するため、元・下請それぞれが施工上果たすべき役割を、▽施工計画の作成▽工程管理▽品質管理▽安全管理▽技術的指導▽その他-の6項目に整理した。施工計画の作成の場合、元請は「請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成」など計3事項、下請は「請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成」など計3事項が設定されている。

元請は役割事項のすべてを行う必要があるとした。一方、下請については、それぞれの下請次数や施工関与の形態に応じた事項が適用されるとした。単一工種で単一の下請企業と請負契約を締結する場合、一括下請負に抵触する恐れが高いことから、工事現場での関与に関する事項(現場作業にかかる実地の技術指導、元請負人との調整、下請負人からの協議事項への判断・対応)を必須としている。

中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)合同の基本問題小委員会(委員長・大森文彦東洋大教授)が6月に公表した中間取りまとめには、実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除し、不要な重層化を回避するため、一括下請負の判断基準の明確化を図る必要があると明記されている。

実質的関与の判断基準は次の通り。

【元請が果たすべき役割】
〈施工計画の作成〉
△請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成△下請負人の作成した施工要領書等の確認△設計変更等に応じた施工計画書等の修正
〈工程管理〉
△請け負った建設工事全体の進ちょく確認△下請負人間の工程調整
〈品質管理〉
△請け負った建設工事全体に関する下請負人からの施工報告の確認、必要に応じた立ち会い確認
〈安全管理〉
△安全確保のための協議組織の設置・運営、作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置
〈技術的指導〉
△請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等法令順守や職務遂行の確認△現場作業の実地の総括的技術指導
〈その他〉
△発注者等との協議・調整△下請負人からの協議事項への判断・対応△請け負った建設工事全体のコスト管理△近隣住民への説明

【下請が果たすべき役割】
〈施工計画の作成〉
△請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成△下請負人が作成した施工要領書等の確認△元請負人等からの指示に応じた施工要領書等の修正
〈工程管理〉
△請け負った範囲の建設工事に関する進ちょく確認
〈品質管理〉
△請け負った範囲の建設工事に関する立ち会い確認(原則)△元請負人への施工報告
〈安全管理〉
△協議組織への参加、現場巡回への協力等請け負った範囲の建設工事に関する労働安全衛生法に基づく措置
〈技術的指導〉
△請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等法令順守△現場作業の実地の技術指導
〈その他〉
△元請負人との協議△下請負人からの協議事項への判断・対応△元請負人等の判断を踏まえた現場調整△請け負った範囲の建設工事に関するコスト管理△施工確保のための下請負人調整。

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