2016/12/07 建設工事従事者安全健康確保法案、臨時国会で成立濃厚/参院国交委が了承

【建設工業新聞 12月 7日 1面記事掲載】

公共、民間のすべての建設工事を対象に安全衛生経費の確保や一人親方問題への対処を定める「建設工事従事者の安全および健康の確保の推進に関する法律案」の今臨時国会での成立が濃厚となった。参院で先行して審議され、6日の国土交通委員会(増子輝彦委員長)で実質審議を伴わない委員長提案が行われた。7日の本会議で可決後、衆院に送られ国交委と本会議を経て14日の会期末までに可決・成立する見通しだ。

同法案は、建設工事従事者の安全や健康の確保を推進するための基本理念を定め、国、都道府県、建設業者それぞれの責務を明記。政府は、施策を実施する上で必要な法制、財政、税制上の措置を講じるとする。成立すれば公布から3カ月後に施行する。

政府は同法に基づき、施策の総合的で計画的な推進を図る基本計画を策定。都道府県も国の計画に沿った計画作りに努める。法案には、基本的施策として、安全や健康の確保に必要な経費を工事請負契約で適切かつ明確に積算、明示し、支払いを促進することに加え、▽下請関係の適正化の促進▽労災保険関係の状況把握の促進▽現場の安全性の点検・分析・評価▽安全に配慮した設計、省力化・生産性向上にも配慮した材料・資機材・施工方法の開発・普及の促進▽意識の啓発-などを列挙している。

関係者間で調整して施策の推進を図るため、「建設工事従事者安全健康確保推進会議」と「建設工事従事者安全健康確保推進専門家会議」という二つの会議を法律に基づき設置することも明記した。

同日の参院国交委では、委員長提案を異議なしとして確認。その上で、建設工事従事者の安全と健康確保を推進する上での10項目の委員会決議を全会一致で採択した。決議では、法定福利費を内訳明示した見積書の提出に関する施策を強力に進めるなど、社会保険の未加入対策を一層推進し、社会保険への加入経費を下請まで確実に支払われるようにするよう努めることなどを求めている。

決議について石井啓一国交相は「趣旨を尊重し、関係省庁と連携しながら努力していく」と応じた。

民進党の建設職人の安全・地位向上推進議員連盟の会長も務める増子委員長は、同法案に続き、「建設業法上、とび・土工業種に包含されている足場工事の許可業種区分を新設できるよう努力していきたい」との考えも示した。

《建設工事従事者の安全および健康の推進に関する決議》

【1】建設工事従事者の「安全および健康の確保」が「処遇の改善および地位の向上」の促進を旨として行われるよう、これらを総合的に結びつける施策の検討を進め、基本計画に盛り込むこと。また、その際「安全および健康の確保」が何よりも優先されるべきであることに十分配慮すること。

【2】墜落事故の防止対策その他建設工事従事者の安全および健康の確保に関する経費については、現在、政府が進めている法定福利費を内訳明示した見積書の提出等に関する施策を一層強力に進める等、社会保険一般の未加入対策について、その一層の推進を図ること。

【3】社会保険に関する必要な経費を適切かつ明確に確保し、これが下請事業者に至るまで確実に支払われ、所要の施策が講ぜられるようにすることは、建設工事従事者の安全および健康の確保のみならず、処遇の改善を図る上でも重要な施策であることに鑑み、社会保険料一般を含む安全および健康の確保に関する経費が適切に支払われるよう努めること。

【4】建設労働災害や事故の原因の一つとして、適正な工期が確保されていない問題が指摘されていることに鑑み、安全確保のための余裕ある工期の設定が図られるべきでることを基本計画において明示すること。

【5】建設労働災害の撲滅に資するため、建設工事現場の調査、研究、分析に努めること。

【6】建設工事の現場の安全を確保し、災害を防止するためには、不断の点検が重要となるため、十分や知識・経験を有する者による点検の措置を図ること。

【7】専門家会議の委員の人選に当たっては、単に専門的知識だけでなく、科学的、社会政策的知見に基づき客観的立場に立った意見および建設工事従事者の立場に立った意見の反映が担保されるような構成とすること。

【8】本法の趣旨に基づき、建設労働災害の4割程度を占める墜落災害の撲滅を期すために、制度の整備および労働災害防止計画の改定を始めとする実効ある対策を推進すること。

【9】本法による施策の推進をより実効あらしめるため、関係する審議会等に現場の実態が的確に反映されるよう、委員の構成等について配慮すること。

【10】今後東京オリンピック・パラリンピック関連工事が増大することに伴い、建設工事従事者の安全と健康に特に配慮が必要な状況の下、政府はそのために必要な対策を講ずること。

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