2017/01/05 石井啓一国交相に聞く/2017年行政運営の方針は/「生産性革命」前進へ

【建設工業新聞 1月 4日 1面記事掲載】

◇社保加入集大成の年/震災復興さらに加速

石井啓一国土交通相が建設専門紙各社共同の新春インタビューに応じ、2017年の行政運営への抱負を語った。頻発する自然災害への対応などで建設業界が役割を継続して果たせるよう「建設投資の安定的・持続的な確保が重要だ」と強調。今年を「生産性革命前進の年」と位置付け、i-Constructionなどの施策を積極展開する方針も示した。建設業関連制度の基本的枠組みの見直しにも意欲を見せた。

--建設業界の現状をどう見ている。

「災害のたびに建設業界には応急対応や復旧で重要な役割を果たしてもらう。こうした役割を引き続き担ってもらうには建設投資の安定的・持続的な確保が重要だ。担い手の確保・育成に向け処遇改善と働きやすい環境づくりも進めたい。5年前から進めてきた社会保険未加入対策は今年が集大成の年。全力で取り組む。過去4度にわたって引き上げた公共工事設計労務単価が技能者の賃金に的確に反映されるよう、業界団体にもお願いしている」

「専門工事業者が協力して教育訓練を行う職人育成塾や、建て替え工事が完了する富士教育訓練センターなどの活動も引き続き支援していく。技能者が適正な評価と処遇を受けられるようにする建設キャリアアップシステムは秋にも稼働させたい。将来を見据え、建設業関連制度の基本的枠組みも見直していきたい」

--昨年は「生産性革命」に力を入れた。

「すべての建設生産プロセスにICT(情報通信技術)を活用するi-Constructionは、1月に産学官が参加する『i-Construction推進コンソーシアム』を設立してさらに推進する。生産性の向上で長時間勤務を是正し、建設業の魅力向上と担い手確保につなげる。昨年は『生産性革命元年』と名付けたが、今年は『生産性革命前進の年』と位置付け、生産性革命本部で選定した20の先進プロジェクトを具体化させる。人口減少下でも生産性を高めて経済を成長させ、安倍政権が目標に掲げるGDP(国民総生産)600兆円の達成に貢献したい」

--社会資本整備にはどう取り組む。

「社会資本は民間投資促進などストック効果を通じて経済成長に寄与する。災害から国民の生命と財産を守る使命もある。17年度予算案で公共事業費は、前年度を20億円上回る5兆1807億円を確保できた。ストック効果を最大化する戦略として、複数事業を一体的に進める『賢い投資』、施設の利用効率を高める『賢く使う』を徹底する」

「生産性向上には発注や施工時期の平準化も不可欠だ。17年度予算案では2カ年国庫債務負担行為(国債)を16年度の700億円から1500億円に倍増させた。加えて、当初予算では初めてとなるゼロ国債を1400億円計上した。ゼロ国債はこれまで補正予算で手当てしており、発注手続きに十分な期間が取れなかった。当初予算で計上すれば計画的な発注に役立つ。平準化に寄与する画期的な取り組みだと自負している」

--この3月で東日本大震災から6年がたつ。昨年は熊本地震で大きな被害が出た。

「東日本大震災の被災地では、復興道路・復興支援道路、復興まちづくり、観光復興の取り組みを一段と加速させる。復興道路・復興支援道路は、開通または開通目標年次を明らかにした区間が全体の9割に達した。JRの山田線、常磐線の復旧も復興・創生期間(16~20年度)内の完了を目指す。住宅再建・復興まちづくりでは、住まいの復興工程表に基づいて事業を着実に進める。本年度中には、災害公営住宅が約2万5000戸、高台移転が約1万3000区画で完成する予定だ」

「熊本地震の被災地でも住まいの確保、インフラの復旧、観光復興に取り組む。地震発生当初、最大で20万人超が避難していたが、住宅の応急危険度判定や応急的な住まいの確保を進めた結果、昨年11月18日までにすべての避難所を閉鎖することができた。今後は恒久的な住まいの確保に努める。インフラ復旧も、12月24日に俵山トンネルと迂回路を介して熊本市と南阿蘇村を結ぶ東西方向の経路が開通するなど着実に進んでいる。完了までに相当の時間を要する熊本城や阿蘇大橋地区の復旧・復興にも熊本県などと連携して取り組む」

--昨年の臨時国会で無電柱化推進法が成立した。

「無電柱化には、道路の防災性向上、安全性・快適性の確保、良好な景観形成という三つの意義がある。日本は東京23区でも無電柱化率が7%にとどまり、欧米の先進国やアジアの主要都市に比べても著しく遅れている。これまでもケーブルの直接埋設による低コスト化や国道の緊急輸送道路への電柱の新設禁止といった措置を講じてきた。法律が制定されたのを受けて、今後は有識者の意見を聞きながら無電柱化推進計画を策定し、インバウンド(訪日外国人旅行者)観光の受け入れや首都直下地震に備え、これまで以上に力を入れて取り組む」。

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