2017/02/03 政府/長時間労働是正へ議論開始/残業規制、建設業の例外規定が焦点

【建設工業新聞 2月 3日 1面記事掲載】

政府は働き方改革の柱として長時間労働の是正に向けた議論を始めた。1日に開いた「働き方改革実現会議」で、議長の安倍晋三首相は「罰則付きで時間外労働の限度は何時間かを具体的に定める法改正が不可欠」と指摘。建設業は現行法では時間外労働の上限規制の適用除外業種の一つで、「例外は認めない」「慎重な検討が必要」と議員の意見も分かれており、今後、例外規定の扱いが焦点になりそうだ。=2面に関連記事

同日の会議では長時間労働是正に向け、事実上無制限に時間外労働を課すことができる36協定を見直し、残業時間に実効性のある上限を設けることを検討した。議員の榊原定征経団連会長が「労働者保護の観点から時間外労働の上限規制が必要」と述べるなど経済界も規制の強化を容認。規制の方向性については日本商工会議所の三村明夫会頭が「一律に規制するのではなく、柔軟な制度設計とすべき」との見解を示した。

適用除外の扱いについては議員で意見が分かれた。「例外的な取り扱いは行わず、上限規制へ到達するステップを明らかにすることが必要」などの意見が出た一方、業務の特性や事業の継続性などを考慮し、「さまざまな角度から慎重な検討が必要。仮に適用除外を本格的に見直すなら十分な時間的余裕が必要だ」と指摘する声もあった。

厚生労働省の有識者検討会は1日、時間外労働規制に関する論点を整理し、業務特性や取引慣行などで長時間労働の傾向が強い業種・職種は法的な上限規制だけでは一挙に解決することが難しいと指摘。実態を十分精査した上で、労働時間の計画的な見直しを進めるためのアプローチも検討する必要があると明記した。

残業の上限規制は原則、全業種が対象だが、繁閑の差が大きい業務や災害復旧など緊急性の高い業務などに特例を設けるかどうかが今後の議論の焦点になりそうだ。

会議で石井啓一国土交通相は、長時間労働の是正が課題となっている建設業について「元・下請間の取引の適正化が欠かせない」との認識を示した上で、昨年末に日本建設業連合会(日建連)に対し「建設業の適正取引推進のための自主行動計画」の策定を要請したことを報告。現場で働く人たちと直接意見交換し、積極的に働き方改革を進める方針も表明した。

次回会議では長時間労働の是正策に関する事務局案が提示される。残業の上限時間や例外業種などの方向性を示して議論を深め、3月末にまとめる働き方改革の実行計画に盛り込む。

□時間外労働規制□

労使間で「36(さぶろく)協定」を結ぶと法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働が可能になる。時間外労働には厚生労働省の告示で「月45時間・年350時間」の上限が設けられているが、特別条項付きの36協定を結ぶと年間6カ月まで残業時間を事実上、無制限に延ばすことができる。建設業は仕事が天候などの自然条件に左右されるため、上限規定の適用が除外されている。

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