2017/03/01 国交省/経審見直し議論開始/企業評価WGが初会合、評価軸の多面化が論点

【建設工業新聞 3月 1日 1面記事掲載】

国土交通省は経営事項審査(経審)の見直し議論に入った。元請企業以外の受審や民間工事での利用などを踏まえ、経審の意義と内容を検証する。生産性向上や働き方改革など政策目標に合わせて評価軸を多面化するかどうか、どのように反映させるかが論点。消費者保護の観点から、有益な企業評価情報の提供・活用についても議論する。

建設産業の10年後を見据えて産業政策を議論する有識者会議「建設産業政策会議」の下に設置した「企業評価ワーキンググループ(WG)」(座長・丹羽秀夫公認会計士・税理士)の初会合を2月27日に開いた。

経審は、許可行政庁が全国統一の客観的指標で一元的に行っている。近年、民間工事の施工者選定に利用されたり、元請としての完成工事高がゼロでも受審したりなど、活用の幅が広がっている。

こうした実態を踏まえ国交省は、建設業許可、経審、競争参加資格審査など各段階で求められる企業評価の意義と内容を検討する方向性を示した。元請にならない専門工事企業の適切な評価や、民間工事の事業者選定に役立つ企業評価情報などを論点として提示。公共・民間の発注者や消費者などにとって、有益な企業評価情報の提供・活用も論点の一つに挙げた。

現在の経審は、経営規模(X)、経営状況(Y)、技術力(Z)、社会性等(W)の4区分で審査を行っている。国交省は、生産性向上や働き方改革、地域建設業の役割維持といった視点を評価軸に加えることを提案した。

委員からは、評価軸に新たな視点を加えることについて、「多面的な評価軸、要素を持ち込むには慎重な説明が必要だ。一つの政策課題には一つの政策手法が基本であり、経審の中でさまざまな政策目標を達成するには無理がある。別の制度を考えるのも一つの方法だ」と問題提起する意見も出た。

審査方法について、国交省は申請・確認書類を簡素化し、申請側、審査側双方の負担を軽減する方向性を提示。企業の経営形態の多様化に加え、後継者難による事業承継などへの対応も論点に挙げた。委員からは「情報精査には労力とコストがかかるが、公共機関が実施しているため実態が分からない。民間に開放すると過大な負担かどうかが分かるようになる」などの意見が出た。

《企業評価見直しに向けた検討の視点》

■企業評価全般     
△許可、経審、競争参加資格審査などの各段階で求められる企業評価の意義と内容
△企業評価で評点化になじむ項目と、評点化にはなじまないものの評価すべき項目の整理
△評点化になじまない項目の評価方法
△企業評価が建設企業の行動に一定の影響を与えることを踏まえ、政策誘導になじむ項目となじまない項目の区分
△現行の企業評価が主に元請を対象としていることを踏まえ、元請にならない専門工事企業の適正な評価(専門工事業ならではの評価)
△民間発注工事での事業者選定に資する企業評価情報へのニーズ
△保証などを通じた第三者による評価へのニーズ
△消費者保護の観点から現行の閲覧制度が果たしている役割とその限界
△閲覧以外の手法による情報の提供
△企業が作成・公開している情報の活用

■評価軸・審査方法   
△「右肩上がり」ではない時代の経営規模の意義
△CM方式、除雪など建設工事以外の分野への建設企業の活動の広がり
△建設企業の利益率の向上、倒産企業数の減少
△企業経営における「生産性」
△現在採用されている指標以外に資本の効率性など企業の経営面や財務面の評価で用いられる指標の検討
△建設企業に今日求められる「社会的役割」
△働き方の改善、生産性の向上などの反映
△地域の守り手としての役割の反映(各地域の発注者による地域性を踏まえた評価に留意する必要)
△申請手続きでの建設企業・許可行政庁の負担軽減
△第三者による確認や監査などの活用
△企業の経営形態の多様化に加え、後継者難などに起因する事業承継などへの対応

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