2017/03/21 国土交通省 「第4回 建設産業政策会議」が開催。 ”生産性の向上”をテーマに議論。

3月16日 国土交通省は「第4回 建設産業政策会議」を、東京 霞が関の中央合同庁舎3号館にて開催した。



第4回となる今回は、主に”生産性の向上”をテーマに「生産性」とどう向き合っていくかということについて議論がされた。
冒頭、根本国土交通大臣政務官より、「今後、建設業の生産年齢人口の一層減少が見込まれる中、社会、経済の根幹を支える建設業が将来にわたってその役割を支えるために担い手の確保のみならず、建設業の生産性向上を図っていくことが不可欠である。生産性向上を実現するには、現場において施工の効率化を図ることに加えて、制度的な対応を含め、建設生産性システム全体の中で、設計者や発注者などの関係者と連携、協力することが重要である。」と挨拶があった。


根本国土交通大臣政務官

<建設業生産システムにおける向上>
建設生産システムにおける生産性向上に向けた基本的な視点として、
○建設生産システムが様々なプロセスやプレーヤーの相互関係から成り立っていることを踏まえ、それらの円滑な接続・連携を実現することで、個別企業の努力だけでは達成し得ない生産性向上を実現
○劇的なイノベーションの進展を踏まえ、各企業も、より一層の生産性向上に向けた企業努力を継続
の2点にフォーカスをあてて進めていくと説明があった。

1.各プレーヤーの円滑な接続・連携による生産性向上


※上記資料は「第4回 建設産業政策会議」資料より引用

各プレーヤーとの関係についてどのような課題があるか、それぞれ各パターンごとに考えられる課題が示された。

(1)設計と施工の間の円滑な接続・連携
○設計と施工のより円滑な接続を実現する観点から、例えば、BIMの一層の活用について、どのような環境整備が必要か。
○設計と施工の初期段階からの連携を図る観点から、フロントローディング(例えばECI等)を一層進めるためにどのような環境整備が必要か。

(2)発注者と設計者の間の円滑な接続・連携
○発注者が設計者から提出される設計図書の妥当性を判断できないケース(特に、何年かに一度の公共建築)、設計者において、発注者から与えられる条件に合致しない設計を行うケースがあることも踏まえ、発注者と設計者がより円滑に接続・連携する方策として何が考えられるか。

(3)発注者と施工者(元請)の間の円滑な接続・連携
○生産性向上の観点から、受発注者の関係において取り組む課題は何か。

(4)元請と下請の間の円滑な接続・連携
○元請と1次下請、2次下請等、建設業者による重層構造の中で、生産性を阻害している要因は何か。また、それを解決する方策としてどのようなものがあるか。

(5)施工者と工場製品メーカー、物流業者等の円滑な接続・連携
○今後、生産性向上等の観点から、ますます工場製品化(プレキャスト製品化)が予想されるが、品質を確保しつつ生産性向上につなげるためにどのようにすべきか。
○加えて、工場製品も含めた資材等の搬入に関し、物流分野においては今後一層の人手不足が見込まれる中、更なる効率化等どのような取り組みが必要か。(これまでジャストインタイムによる資材搬入も行われてきたが、物流分野における人手不足により、従来の対応が難しくなる恐れがある。)


2.生産性向上に向けた最新技術の活用
(1)クラウド管理やビックデータの活用等、最新技術を活用した生産性向上を進めるにあたって、どのような課題があるか。

(検討の視点の例)
- クラウドサービスを利用した一元的情報の集約・活用(例えば、各プレーヤー間や本社・現場間)
- ビックデータ(例えば、気象・気候、事業量等)を活用した経営、施工のあり方
(2)建設業許可に当たって作成する書類や保存書類、あるいは請負契約関係書類について、更に電子化を進めるためにはどのような方策が考えられるか。
(検討の視点の例)
- 電子情報を活用することを踏まえた許可申請等書類、保存書類のあり方
- 電子商取引を行うにあたって、建設企業に必要となる環境整備


※上記資料は「第4回 建設産業政策会議」資料より引用

(1)については、具体的に以下の報告があった。
・ビックデータの活用
○ICT技術の進化により、様々なデジタルデータ(ビックデータ)が記録、蓄積されている。このデータを分析して必要な情報を抽出・利活用することにより、新しい価値を生み出す可能性がある。


※上記資料は「第4回 建設産業政策会議」資料より引用

・地理空間(G空間)情報の活用
○様々な主体が保有する地理空間情報を、G空間情報センターに集約し、広く一般に提供するとともに、地理空間情報の様々な利活用モデルを提示することで、様々な主体が地理空間情報を様々な場面で高度に利活用する社会を実現。

・気象ビジネス市場の創出
○IoTやAI等の技術の進展により、農業、小売業、運輸業をはじめとする幅広い産業において気象データを利用した生産性の飛躍的向上が見込まれるが、企業等においては気象データを高度に利用する取り組みは未だ低調。
○産業界と気象サービスのマッチングや気象データの高度利用を進める上での課題解決を行う「気象ビジネス推進コンソーシアム(仮称)」を立ち上げ、IoTやAI等の先端技術を活用した新たな気象ビジネスの創出・活性化を強力に推進。

・技能訓練の生産性向上
○工事現場の生産性向上に加え、担い手の育成や効率的な技能習得の観点から、技能訓練の分野においても生産性の向上を図る必要があるのではないかと考えられる。


※上記資料は「第4回 建設産業政策会議」資料より引用

<建設現場における生産性向上の取組 ~i-Construction~>
今年は「生産性革命前進の年」として、生産性向上に努めていく。建設業界における生産性向上をi-Constructionと命名して進めていき、2025年度までに2割向上を目指す。
高齢化等により、人が少なくなっていく中でICTの導入によって補うことにより省人化を行い、今よりも少ない工事日数、今よりも少ない人数で現在の工事量を達成していきたいと考えている。
ICT土工は今まで14件完成しており、その結果を分析すると平均26.1工期が削減されているという効果が出ていることが速報でわかっていると説明があった。


※上記資料は「第4回 建設産業政策会議」資料より引用

工事をやって改善をすべき様なところについては、常にフィードバックしながら、生産性を高めていきたい。今後はICT土工以外の分野にも拡大を考えており、来年度からICT舗装工も行っていく。
更なる推進のため、「i-Construction推進コンソーシアム」を設立しており、「技術開発・導入WG」、「3次元データ流通・利活用WG」、「海外標準WG」を設立して取り組みをさらに進めていこうと考えているとの報告があった。


議論の中で、委員からは以下の意見が寄せられた。
・現場の施工中心に取り組みを紹介頂いたが、もう一歩進んで事業全体、調査・計画段階から時間単価に至るプロセスでこの取り組みをどれだけ現実にできるか、ぜひ推進して頂きたい。

・歴史的な問題として重層化構造がある。3次から下、いわゆる見えない下請を調査してどういう風に生産性向上に向けて改善していくという観点をもって進めないといけないのではないか?

・多様性ということを考えた場合、お互いの信頼関係があれば指名入札があってもいいのではないか?また関連企業との事前協議の不備が無くなるだけでも生産性は向上するのではないか。

「建設産業政策会議」では10年後においても建設産業が「生産性」を高めながら、「現場力」を維持していくための建設業関連制度の基本的枠組みについて検討を行い、来年6月をめどに取りまとめを行う。


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