2018/05/30 国交省/重層下請構造改善へ「下請共同施工制度」提案/次数や企業数の見える化も

【建設工業新聞 5月 29日 2面記事掲載】

国土交通省は重層下請構造の改善に向けた取り組みを進める。繁忙期でも行き過ぎた重層化を防ぐため下請企業の主任技術者の配置要件を合理化。上位下請の主任技術者が下位下請の主任技術者の業務範囲をカバーし、下位下請の主任技術者の配置を不要にできる「下請共同施工制度」(仮称)を検討する。発注者に説明できない重層構造を回避する方策として、施工体系図などを活用し次数や企業数の見える化を検討する。=1面参照

28日に開いた中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)の下に置く合同の基本問題小委員会で、同省が重層下請構造の改善に向けた対応策を提示した。重層化の要因を▽専属型(建設投資の減少などにより直用技能者を外注化)▽繁忙期型(繁忙期に労務を確保するための下請発注)▽代理店型(資材調達などを行う商社・代理店が施工体制に入る)▽その他-の四つに整理。それぞれに対応の方向性と具体的な施策例を示した。

専属型では安定的な建設投資の確保を前提としつつ、社員化などを進める方向性を提示。今秋稼働する「建設キャリアアップシステム」を活用し、技能や経験を有する技能者を社員化できる環境を整備するとした。

繁忙期でもなるべく重層化しない仕組みを構築する施策例として、下請間の重層化を軽減する「下請共同施工制度」を提示した。一定の工種を対象に、下請企業すべてで共同企業体(JV)を構成したり、下請1社(1次)の下に他の下請全社(2次)を並列で置いたりなどの仕組みを想定。JVの代表企業や1次の下請1社の主任技術者が、下位下請の主任技術者の業務範囲をカバーし、技術者配置の合理化にもつなげる。

このほか繁忙期の対応としては施工時期の平準化を推進し、なるべく繁閑の波をなくしていく。厚生労働省の「建設業務労働者就業機会確保事業」(就業機会確保事業)を有効活用して労務提供の円滑化を図るという方向性も示した。

公共、民間を問わず工事を行う場合、建設業法で施工体制台帳の作成と、施工体系図の掲示が規定されている。特に、公共工事は公共工事入札契約適正化法で、施工体系図を公衆にも見やすい場所に掲示することが規定されている。不必要な重層下請構造をなるべく回避するため、施工体制台帳や施工体系図などを活用し下請次数や下請企業数を見える化する。

代理店型の対応としては、実質的に施工に携わらない建設企業を排除する。基本問題小委は16年6月に公表した中間取りまとめで、実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除するため、一括下請負の禁止に関する判断基準を明確化するよう提言。同10月に一括下請負に該当しない「実質的関与」を元請、下請が明確に判断できる基準を策定している。

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