2020/06/19 国交省/社保・労働規制逃れの「一人親方化」対処へ議論/6月25日に検討会初会合

【建設工業新聞  6月 18日 1面記事掲載】

国土交通省は、社会保険加入や長時間労働規制などの回避を目的にした社員(技能者)の「一人親方化」に対処するため、議論を本格化する。学識者や建設業団体などで構成する検討会を立ち上げ25日に初会合を開く。職種ごとに一人親方の実態を把握し、規制逃れの一人親方化や処遇改善などで実効性のある施策を検討。2021年3月をめどに中間報告をまとめる。

一人親方は法令上、社会保険の加入義務がない。事業主になるため働き方改革関連法に基づく年次有給休暇の取得義務や、時間外労働の罰則付き上限規制なども適用されない。このため本来、雇用すべき技能者を一人親方化する動きがある。国交省は動向を把握して実効性のある対策を検討する。

産学官で組織する「建設業社会保険推進・処遇改善連絡協議会」の第4回会合を15日に東京都内で開催。20年度の重点課題の一つに「一人親方対策の推進」を掲げ、同協議会の下部組織として「建設業の一人親方問題に関する検討会」の新設を決めた。

委員には学識者として蟹澤宏剛芝浦工業大学教授と水町勇一郎東京大学教授、川田琢之筑波大学教授の3人が参加。建設業団体は元請団体や専門工事業団体、全国建設労働組合総連合(全建総連)など計15団体の参画を予定している。厚生労働省(労働基準局、職業安定局)と国交省がオブザーバー参加する。

国交省は19年度に「一人親方化」の抑制対策リーフレットを作成した。技能者自身が加入している年金や現場での働き方をチェック。「一人親方(個人事業主)」と「社員(労働者)」のどちらが適切な働き方なのかを確認してもらう。

加入している年金ごとに将来の受給額を試算。社員として厚生年金に加入した場合、一人親方として国民年金に加入した場合よりも将来の年金受給額が2000万円近く多くなる可能性がある。働き方を踏まえ適切な年金加入を会社に相談するよう呼び掛けている。全建総連を通じて技能者に直接届ける。

国交省や地方整備局、元請業者、専門工事業団体などにも広く配布し内容を周知する。

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