2020/07/15 土木学会/コロナ禍でインフラ整備・運用転換を/新たな価値観で垂直展開

【建設工業新聞  7月 15日 1面記事掲載】

土木学会(家田仁会長)は14日、コロナ禍を機に変容する社会やインフラ整備・運用の方向性などを示した声明を発表した。今後を「ポストパンデミック(世界的大流行)時代」と位置付け、新たな価値観で既存の制約にとらわれず、新技術を駆使しながらインフラの進化と転換を図る「垂直展開」を目指すべきだと表明。各分野の課題を解決する具体策をパンデミック特別検討会のほか、一般も含めた研究討論会(9月開催予定)などの意見も踏まえ、来春にもまとめる。

声明はコロナ禍でもエッセンシャルワーカーとして働き続けるインフラ従事者や土木技術者のほか、インフラ分野などで顕在化した問題・課題の解決が迫られる社会全体へのメッセージとして発信した。

感染症リスクの軽減に当たり、建設関係では3密(密閉・密集・密接)回避と労働集約的な現場作業の継続という二律背反的な命題に取り組み、厳しい環境下でも臨機応変かつ発展的な対応を検討するよう要請。遠隔制御による無人化施工や人工知能(AI)を活用した自動化などを積極採用し、新たな生産システムを構築する必要性も訴えた。

インフラ管理では下水疫学情報を活用した感染症流行検知システムの構築を提案。下水中の病原ウイルスなどのモニタリングを通じ、関連部局が適切に連携する仕組みの必要性を訴えた。

自然災害と感染症の複合災害では、適切な整備・維持管理による基幹インフラの健全性確保とともに、分散避難の確実な実施を重視。被災規模の予測技術や避難行動の交通シミュレーション技術などを用いた情報提供システムを早期に構築し、市区町村の災害対応を支援することも求めた。

特別検討会の委員長を務める家田会長は14日の会見で「インフラの重要性をパンデミックの中で改めて痛感した」と説明。従来型の水平的なインフラ整備や使い方の見直しについても「全国一律に少しずつではなく、もっと素早く、戦略的かつ集中的にやらなければならない」と強調した。

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