2020/10/09 CCUS登録進まず/モデル現場、事業者・技能者とも低迷/全建調査

【建設工業新聞  10月 8日 1面記事掲載】

全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の推進に向け取り組む「モデル工事現場」33カ所の調査結果をまとめた。下請企業の事業者登録率が国土交通省の義務化モデル工事の最低基準70%を上回っていたのは24%。技能者登録率の最低基準60%をクリアしていたのは34%だった。CCUSを活用したモデル工事現場の74%が「メリットがない」と回答した。普及促進のためには、公共工事の積算にCCUSにかかる経費の計上が必要だと指摘している。

全建がモデル現場の調査を実施するのは初めて。8月末時点の状況を調べた。33現場の内訳は国の直轄23、地方公共団体8、民間2。請負金額1億円以上2億円未満、実労働日数が50日以上100日未満で、延べ技能者数は1000人以上5000人未満が多い。

下請企業が入る現場のうち、下請企業が1社も事業者登録していなかった現場が全体の40%を占めている。「1社以上5社未満」が33%で続いた。下請企業の登録率を見ると、「90~100%」は7%、「70~89%」が17%だった。現場に入る技能者の登録は、「10人以上25人未満」が35%で最多。登録率は「80~100%」が13%、「60~79%」が21%だった。

カードリーダーは93%が1台、2台設置は7%だった。タッチして入場した技能者は「10人以上25人未満」が35%で最も多い。就労履歴蓄積率は全体の73%が国交省CCUS義務化モデル工事の最低基準30%をクリアしていた。

社会保険加入や資格者情報の確認、施工体制台帳や作業員名簿にCCUSを使用していたのは1件。未登録の下請業者が多くいるため、書類作成にCCUSを活用していないのが要因とみられる。「発注者指定の様式で提出が求められることが多く、CCUSで出力した様式を認めてほしい」といった意見があった。企業や技能者の情報を元請などが閲覧できることによる問題は1件も発生していなかった。

下請企業に対し加入促進対策を実施していたのは62%。技能者登録が進まない理由としては、「書類申請に経費と手間がかかる」「登録したメリットがない」といった回答が集中した。工場で鉄筋加工する専門工事業者からは「カードリーダーが設置されていないため、登録するメリットがない」との指摘があった。

発注機関への要望には公共工事の積算で技能者の賃金アップ分やカードリーダー設置費、カードタッチ費用などの計上を求める声が多い。工事成績評価や総合評価、経営事項審査への加点といったインセンティブを求める意見も目立つ。

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