2021/07/01 建退共/中退共管理の合同運用に委託運用変更/22年4月開始、リターン拡大へ

【建設工業新聞  7月 1日 2面記事掲載】

勤労者退職金共済機構(勤退共)の建設業退職金共済事業本部(建退共本部、稗田昭人本部長)が資産運用の見直しに着手する。自家運用と委託運用を合わせて約1兆円の資産規模があるものの、適切なリスク分散が行われていないため運用方法を改善する。うち委託運用は中小企業退職金共済(中退共)本部が管理する合同運用に加わる方向で検討を進める。

6月30日に開いた運営委員会・評議員会で委託運用資産の合同運用の検討に入る方針を報告した。11月に新たな基本ポートフォリオ(運用資産構成)とともに合同運用の採用を正式決定する。中期計画変更案や年度計画案の審議を経て、2022年4月の合同運用開始を目指す。

合同運用には中退共のほか、清酒製造業退職金共済事業(清退共)本部と林業退職金共済事業(林退共)本部が参加している。建退共は中退共と清退共、林退共の合同運用口(特化型)に加わり、資産を合同で運用。利益や損失を持ち分額で評価する。

建退共の運用資産構成は自家運用66・9%、国内債券22・6%、国内株式5・3%、外国債券2・6%、外国株式2・6%に設定している。現行のまま運用を続けると、20~25年度の5年間に累積剰余金が153億円減少すると試算した。

運用資産の約3分の2を占める自家運用は将来の退職金収入と掛け金収入の予測を踏まえ、毎年度安定的に400億円程度の償還が行われるように10年国債と15年国債へ再投資する。30年度以降は再投資可能な金額をすべて15年国債に再投資する方針を固めている。委託運用は期待リターンを引き上げていく必要があると判断した。

建退共は掛け金として預かった資金を退職金として支払われるまでの間、資産運用している。要員上の制約もあり、効率的な資産運用ができていない。小規模な企業年金が採用するバランス型委託を選択せざるを得ない状況が長年続いている。金融ショックが起きた時に大きな損失を被る恐れがあるという。

19年度末に630億円まで減少した累積剰余金は20年度末には811億円まで回復した。14年度1087億円、15年度1041億円と1000億円を超えていた時からすると高い水準とはいえない。責任準備金も増加している。責任準備金に対する累積剰余金の比率は20年度8・54%。10%超だった14~15年度に比べ低い水準とみている。

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