2021/07/13 国交省/盛り土総点検へ調査開始/標高変動箇所を抽出、他省庁や自治体へ情報提供

【建設工業新聞  7月 12日 1面記事掲載】

静岡県熱海市で3日に発生した大規模な土石流災害を受け、国土交通省は作成時期の異なる地形図データを基に盛り土の可能性がある箇所を抽出する作業を始める。宅地造成地などに限らず5メートル以上の標高差が生じた箇所をすべて洗い出し、今後の安全性点検の参考にする。1カ月後をめどに関係省庁や地方自治体に抽出箇所を情報提供し、両者と連携する方向で点検方法の枠組みも固める。

9日の閣議後に会見した赤羽一嘉国交相は、前日の現地視察で「悲惨な被災地の状況を目の当たりにし、危険な盛り土の点検の必要性を改めて認識した」と強調。宅地造成等規制法などの「法律の網に掛かっていない盛り土が存在するのも事実」と問題視した上で、「各省の範囲内で漏れがないか、各省のはざまで法律の穴がないかということも総点検していかなければならない」と述べた。

盛り土の可能性がある箇所は国土地理院が2000年ごろまでに全国で整備した地形図と、08年以降に航空レーザー測量で得た標高データを比較して抽出。険しい山岳地帯などを除いた国土面積の約7割を網羅し、人家があるエリアはほぼカバーできるという。

熱海市の土石流災害を受け、全国各地で盛り土造成地などの緊急点検を表明する自治体が相次いでいる。抽出箇所のデータを自治体に提供し、自治体が独自に保有する類似データと照らし合わせれば、より精度の高い実態把握につながる。

国交省によると盛り土で整備した大規模宅地は3月時点で全国に計5万0950カ所が確認されている。市区町村で造成年代調査や安全性把握調査を推進中。今回の抽出箇所と重なる部分の扱い方も今後詰める。

赤羽国交相は環境省や農林水産省、経済産業省など省庁間で連携し、全国の総点検を進める意向を示している。同日の会見で野上浩太郎農水相は「点検箇所の抽出方法や具体的な点検方法、点検後の対策などについて関係省庁と調整していきたい」と語った。

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