2021/08/20 国交省、農水省/労務費調査、10月実施/一人親方の実態把握へ協力呼び掛け

【建設工業新聞  8月 20日 1面記事掲載】

国土交通、農林水産両省は10月時点で技能労働者に支払われる賃金などを調べる「公共事業労務費調査」を、昨年度と同じく書面送付と電話での聞き取りで実施する。調査対象工事約1万件を選定し、9月に入ってから対象業者に通知。約11万人の技能労働者が対象になる見込みだ。賃金水準の正確な把握につなげるため、調査票の回収率が低い傾向がある一人親方にも協力してもらえるよう重点的に呼び掛ける。

調査結果は次年度の公共工事の積算に用いる「設計労務単価」改定の基礎データとなる。両省や都道府県、政令市、独立行政法人が発注した1件当たり1000万円以上の工事から対象を抽出し、積算に用いる51職種ごとの賃金実態をまとめる。標本数が少ない38職種は9月分も調査する。

対象業者向け説明会は各地方連絡協議会で今月末までに開催可否を判断する。ただ新型コロナウイルスの緊急事態宣言が広がっており見送られる公算が大きい。代替となる説明資料は9月に国交省ホームページへ掲載する。

本年度は一人親方に対する調査協力の呼び掛けを強める。昨年度調査で一人親方の割合は全体の0・8%。総務省の労働力調査を基に推計した割合(2019年平均で15・6%)との隔たりが大きく、賃金実態を把握できているとは言い難いからだ。

書類の不備を無くすよう要請し、有効標本の確保にも努める。無効標本の棄却率は徐々に改善しているが昨年度も27・2%。棄却理由は「所定労働時間が法定の週40時間以内であることが確認できない」が半数を超える。国交省は時間外労働の罰則付き上限規制が建設業で適用されることも踏まえ、現行法に基づく就業規則を早めに作成するよう求めている。

昨年度調査では4割超の地域・職種で賃金実態が前年度を下回った。国交省はコロナ禍の影響を理由に、前年度を上回った単価を除き前年度単価を据え置く特別措置を講じた。不動産・建設経済局建設市場整備課の担当者は、本年度調査でも「新型コロナの感染拡大がどう影響するか見極める必要がある」と指摘する。

3月末に開かれた赤羽一嘉国交相と建設業主要4団体の意見交換会では、21年に「おおむね2%以上」の賃金上昇率の実現に向け関係者が取り組むことで一致した。本年度調査は取り組み成果を判断する最重要指標といえ、建設産業の今後の行方を左右する大きな意味を持ちそうだ。

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