2021/12/13 千葉県内自治体/総合評価方式で若手技術者育成タイプに検証の動き

【建設工業新聞  12月 13日 5面記事掲載】

若手技術者の育成を目的とした総合評価方式の運用を巡って千葉県内の自治体の発注担当者が頭を悩ませている。若手技術者を配置した場合に施工能力の評価点を加算する措置を講じているものの、若手技術者を配置せず、恩恵を受けなかった業者の落札があるためだ。企業の社会性・信頼性や価格も総合評価した上で落札者を決める仕組みのため、若手技術者の配置が受注に直結するわけではないが、問題の背景の一つに担い手不足があると見ている。

ある自治体は難度が特別に高くない工事で、積み上げた実績を他の工事の入札参加に生かしてもらおうと、40歳未満の若手技術者を配置すると企業の施工能力の評価点を加算するタイプの総合評価方式を運用している。同方式適用の制限付き一般競争入札で発注した庁舎の解体工事を2021年度上期に開札したところ、辞退を除く5者が応札した。このうち3者は「若手技術者の配置」で企業の施工能力の評価点が1点加算された。落札したのは加算されなかった2者のうちの1者だった。

応札した5者は、労働災害の防止や災害協力などを評価する「企業の社会性・信頼性」の評価点がほぼ満点で、若手技術者の配置を含む企業の施工能力の評価で差が生じた。若手技術者を配置した3者は技術評価点の合計が配置しなかった2者を上回ったが、2者の入札金額はともに3者の金額を下回っていた。技術評価点を入札金額で割って算出した評価値に基づき、価格が2番札だった業者の落札が低入札調査を経て決定することになった。

技術力と価格を総合的に評価する競争入札のため、発注担当者は「若手技術者の配置で加点してもらっていない業者が落札した結果は仕方がない」と受け止めている。ただ、入札に関する有識者委員会からの指摘も踏まえ、加点されなかった業者が落札した工事についての検証を進める考え。落札決定のプロセスに不備はないと見ているが、担当者は「若手技術者を優遇する制度を整えて満足してしまっていた部分がある」と語る。運用状況を注視するとともに過去の入札をさかのぼり、「顕在化した担い手不足の問題の一つ」と捉え、入札契約制度の在り方の検討に生かす方針だ。

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